バロック・ハープ

InstBHバロック・ハープの呼び名は幾つかあります。17世紀当時はその特殊な構造から、それぞれの呼び名が生まれたのでしょう。
 イタリアでは白鍵&黒鍵が張られた2列のルネサンス・ハープ、それから3列のバロック・ハープ、この両方を「アルパ・ドッピア」と呼ぶのです。ドッピアとは「2倍の」という意味ですが、すまりは列数ではなく、「全音階と半音階の両方ある」という意味での分類であったため、両楽器の呼び方に差異がなかったようです。17世紀ヴェネツィアの巨匠・モンテヴェルディ作のオペラ「オルフェオ」でも、楽器指定の欄に「アルパ・ドッピア」と書かれています。
 一方、イギリスでは構造的に何列なのかが気になるようで、「ダブル・ハープ」、「トリプル・ハープ」とそれぞれ両楽器を分けて呼びます。
 また現代においては使われた時代の名前を用いて、2列のものを「ルネサンス・ハープ」、3列のものを「バロック・ハープ」と呼ぶ場合があります。
 特徴である3列に張られた弦はまさに密集していますので、非常に視界としては見にくく、また真ん中の列の黒鍵にあたる音列を弾くときには、両脇の弦列から指を通して届かせて弾かなければならない奏法が、きわめて特殊です。
 このバロック・ハープの次代、レバーのついたペダル付きシングル・アクション・ハープが出現します。17世紀までの教会旋法だった音楽から、長調や短調といった調性が確立したために、半音操作を合理的な奏法にした構造なのでしょう。
すなわち17世紀までのレパートリーでは、やはり3列構造のために書かれたハープ作品と思われるような、クロマティックの神秘的、魅力的で悩ましいような旋律、それから長調や短調ではない、この時代まで特有であった旋法上の不協和音や半音が絡む和声がたくさんみられます。