ゴシック・ハープ

InstGHこの中世ゴシック・ハープは24弦のたいへん小さな竪琴で、昔から弾き語りなどをして詩や物語を伝える吟遊詩人(トロヴァドール)たちの楽器のひとつでした。弦はディアトニックに1列に並びシンプルな構造でレバーもペダルもなく、そのため半音階の音を演奏するためには空いている片方の手の指で弦を抑えて弦長を短くする作業を必要とします。古雅で味わい深く、民族楽器を連想させるような音色が特徴です。ヨーロッパ中世の時代(13~15世紀)の楽器は、現存し今も残る楽器がほとんどなく、このハープは15世紀フランドルの画家、ヒエロニムス・ボッシュ(1450-1516)の名画「快楽の園」で描かれているハープを、ドイツのハープ製作者であるR. M. トゥーラウがその絵のデザインを用いて再現したものです。
中世の時代には竪琴は人々に愛され、また演奏する機会も多かったようです。ワーグナーのオペラ「トリスタン」はクラシック界で有名な悲恋物語ですが、元々この物語がヨーロッパ中に広く知れわったったのは13世紀から14世紀にかけてのことです。13世紀のウィーン写本「散文トリスタン」では、ハープが叶わぬ恋を伝達させるための大事な役割をしています。主人公トリスタンも恋人イズー(イゾルデ)もお互いハープを歌い奏で、それを吟遊詩人に覚えさせて遠く離れた場所に住む愛しい恋人へ密やかに自分の愛と旋律を託す、というロマンチックなやり取りのシーンがドラマを盛り立てます。このように昔は恋愛、よく知れた物語、または神や聖母マリアへの賛歌、奇蹟の話などを弾き語り伝承して、生き生きと音楽を奏でていました。